はじめまして、「VRおじさんの初恋」の作者の暴力とも子です。

私がこの漫画を描き始めたのは2018年。
VRという技術に、たくさんの素敵な未来が詰まっていそうな予感の時代。
そしてそれはそれとして、行き場のないロスジェネ中年の悲哀がより一層影を濃くする気配が見え始めた時代でもありました。

私はこの漫画を描いたとき「どんな境遇の、どんな年齢の人が読んだとしても、その人なりに何かを感じられるような物語にしたい」と考えていました。
ですが今振り返って「強いて言えば、誰のための漫画？」と自分に問うならば「主人公である直樹のような人のために」と心の奥では願っていたのだと思います。

ドラマ版を先にご覧になった方には、原作は少し小さな世界の物語に見えるかもしれないと思います。
原作を先に読んだ方にとっては、ドラマ版は原作よりも広い範囲を描く群像劇と感じられるかもしれません。

でも、どちらの直樹も手を伸ばし、やさしさに触れ、そして掴もうとした。

2つの「VRおじさんの初恋」。
どちらもそれぞれの在り方であなたの隣に寄り添える物語になっていれば、と思います。